一身上の都合とは、簡単に述べると退職時に使う定型文です。病気やケガ、家族の介護など個人や身内に関する諸事情のことを指し、かなり広い意味合いで使われる退職理由です。
そのため、「一身上の都合」では本当の退職理由がわからないため、退職時や面接時には「実際の退職理由はなに?」と聞かれることもあります。そこで本記事では、一身上の都合で退職した場合に、理由を聞かれた時の対処法などを解説します。
退職時に「一身上の都合」だと理由を聞かれる?
退職時に「一身上の都合」だと本当の退職理由を聞かれるかどうか不安に思う方もいるでしょう。 結論からお伝えすると、上司などから理由を聞かれることは多いでしょう。
しかし、「競合他社に転職する」「精神的な理由」などの答えなくない理由であった場合は、無理に答える必要はありません。答えにくい退職理由であった場合は、建前上の理由を準備しておきましょう。
退職届には「一身上の都合」と書くのが一般的
退職届には「一身上の都合」と記載するのが一般的です。結婚や引っ越しなどの前向きな退職理由だけでなく、職場の人間関係が辛かったり仕事が嫌になったりなどの後ろ向きな理由もあるでしょう。
その際に、「職場での人間関係が嫌になったので仕事を辞めさせていただきます」と書くと本人も会社側も辛い思いをしてしまいます。
お互い円満に関係性を終わらせるためにも「一身上の都合」と伝えるのです。そうすれば、自分自身辛い思いをすることなく、会社側も気を使うことなく送り出せるようになります。
【関連】退職願の書き方は手書き?横書き?正しい書き方と退職届との違い
具体的な理由を聞かれた時は無理に答える必要はない
退職する際、中には上司に「本当の理由は?」と聞かれることもあるかもしれません。もし具体的な理由を聞かれた場合は無理に答える必要はないです。また、法律上でも退職理由は答えなくても問題ありません(民法627条)。
「労働法は、使用者の方に解雇理由の記載を含む『退職証明書』を出す義務を負わせているだけです(労働基準法22条)。民法上も、期間の定めのない雇用契約では、当事者はいつでも解約の申し入れをすることができると定められており、解約理由は問われていません(民法627条1項)」
退職理由を聞かれた際は、なるべく波風が立たないようできる限りポジティブな理由を用意しておきましょう。全てを赤裸々に語る必要はなく、相手に理解してもらえる程度で、伝えていくのが得策です。
建前上の退職理由を用意しておく
一身上の都合で具体的な理由を聞かれた時は、無理に答える必要はないですが、波風立たないように建前上の理由を用意しておくと便利です。特に退職理由が会社に対する不満だった場合は、正直に話してしまうと円満に退職できない可能性があります。
できれば円満に退職することが1番ですから、会社への不満は語らず、「家庭の事情」や「体調の問題」など、建前の理由を伝えるほうが良いでしょう。採用担当者が深掘りしづらい内容であれば、それ以上理由を聞かれない可能性が高いです。
転職時の面接で「一身上の都合」だと理由を聞かれる?
ここでは、転職時の面接で「一身上の都合」だと理由が聞かれるかどうかについて解説します。
前職を辞めた理由は聞かれる事が多い
転職時の面接では、前職を退職した理由を聞かれることがほとんどです。 企業にとっては、入社して早々退職されてしまうと採用コストや労力の損失になってしまいます。また、会社に入社した後にトラブルを起こさないかどうかを判断するためにも、前職の退職理由は聞かれることも多いです。
会社や従業員とうまく関係性を築けるかどうか、お互いミスマッチがないように前職の退職理由を聞くのです。また、面接時の退職理由についても、なるべくポジティブな理由で答えることをおすすめします。
面接や内定を辞退する時は「一身上の都合」でOK?
面接や内定辞退する場合は、「一身上の都合で辞退します」と伝えても問題ありません。大切なのは、誠実に対応するかどうかです。面接や内定を数日前に辞退することを決めたら、必ず電話かメールのどちらかで連絡する必要があります。
辞退を決めた時点で早めに連絡することで、企業側はスケジュールを再調整しやすくなったり、新たな人材を探す時間ができたりなどができます。相手に迷惑をかけることも最小限に抑えられるため、なるべく早く連絡をしましょう。
退職理由に「一身上の都合」を使うのがダメなケース
一般的には、退職理由に「一身上の都合」を使いますが、中には使ってはいけないケースもあります。ここでは、「一身上の都合」が使えないケースをご紹介します。
会社都合で退職した場合
会社都合で退職する場合は、「一身上の都合」を使うことは避けましょう。会社が倒産したりリストラになった場合は「会社都合」に該当します。
会社都合退職とは、業績悪化や経営破綻など、会社側の都合によって労働契約を終了することをいいます。代表的なのは、整理解雇や退職勧奨、希望退職者募集による退職です。
いわゆるクビになった場合は、自己都合の退職ではないため、「一身上の都合」は使えません。また、本来「会社都合」なのに「一身上の都合」としてしまうことで、失業給付金や退職金にもマイナスの影響が出てしまう可能性もあります。
契約期間の満了で退職した場合
契約社員や派遣社員などが契約期間の満了で退職する場合も「一身上の都合」が使えません。この場合、「契約期間満了による退職」と記載するのが一般的です。
ただし、契約期間が満了する前に退職する場合は、自己都合による退職となります。契約期間が満了していないのに「契約期間満了による退職」と伝えた場合は、経歴詐称に該当するため、注意してください。
退職願で「一身上の都合」以外に使える理由は?
退職願を会社に提出する際、「一身上の都合」以外の退職理由としては以下のような理由があります。
- 家族を介護するため
- 結婚するため
- 子育てのため
- 体調不良が続くため
その理由も、退職するのに否めない理由であり、会社側は深く追求しづらい内容です。円満退職につながりやすい退職理由となるでしょう。
ただし、基本的に自己都合で退職する場合は「一身上の都合」と記載するのが一般的です。具体的な理由を書く必要はありません。
【参考】
・【退職願】「一身上の都合」以外で使える退職理由を紹介!indeed
・ 退職願に書く退職理由に「一身上の都合」以外あるのでしょうか?先日... - 教えて!しごとの先生|Yahoo!しごとカタログ
まとめ
本記事では、一身上の都合で退職した場合、本当の退職理由は聞かれるのかについて紹介し、使う場面も解説しました。自己都合による退職の場合は、「一身上の都合」で問題ありませんが、会社都合などの場合は、一身上の都合を使ってはいけません。
人によっては、理由を聞いてくる人もいますが、赤裸々に理由を語る必要はありません。なるべく円満に退職できるように建前上の理由を考えておきましょう。