退職を引き止めるところ

これから退職を考えている人は、上司や会社から引き止められるのでは?と心配している方も多いでしょう。先にお伝えすると、引き止めはされても会社が退職を強制的に止めるようなことはできません

また、強引な引き止めや退職を認めないのは、パワハラや違法行為にあたる可能性もあります。この記事では、会社側が退職を引き止める理由の本音や上手な断り方についてご紹介します。

退職を引き止められる理由は?会社や上司の本音

引き止める会社や上司はどのような理由から引き止めをしているのでしょうか?会社や上司の本音の部分を考えてみると、あなたのことを思っていることは少なく、保身や会社のためであることも多いです。そのことが分かれば、引き止めをされても悩み過ぎる必要もないことが分かってくるでしょう。

仕事が増えて忙しくなるから

部下や同じ部署から退職者が出てしまうと、一時的にでも誰かが代わりを務めるなどして忙しさが増します。人を増やすにしても、採用したばかりの人は即戦力になるとは限らず、仕事ができるように教育する必要があります。

退職する人がきちんと引き継ぎをして退職日を迎えてくれたのであれば、会社側も準備を進めながら退職手続きを進めてくれますが、突然退職したいと言い出されたのであれば、忙しくなることを考えて引き止めをしてくるようなこともあります。

上司としての評価が下がるから

部長や課長などのある程度立場がある人には、社内の評価制度として、「退職者を出さなかったか?」などの項目がある場合もあります。

退職者が多ければ、部下の管理ができていないとして上司の評価が下がることも多いのです。評価が下がれば、給料が上がらなかったりすることもありますので、上司側としては部下の退職をなるべく引き止めたいでしょう。

しかし、あなたとしては知ったことではありません。「退職したらどうなるか覚えておけ」などと、あまりにも脅迫まがいの方法でしつこく引き止めをするようであれば、パワハラや脅迫罪にも該当する可能性があります。そういった場合は、社内の相談窓口や労働基準監督署に相談することも考えましょう。

採用コストがかかるから

退職者が出てしまえば、新たに採用して人員を補填しなくてはなりません。採用するにあたって、求人を出したり、採用後も研修をしたりと費用や時間がかかります。

「できるだけ退職者は減らせ」などと会社から指令が出ていて、しつこく引き止められるようなこともあるでしょう。ただし、いち従業員が会社のコストを考えて転職を躊躇する必要は微塵もありませんので、気にし過ぎる必要はありません。

あなたのことを考えての引き止めも多い

ここまで、会社・上司都合での引き止めの理由を伝えてきましたが、あなたのことを考えて引き止める人もいるのです。この場合、あなたが曖昧な考えで退職して後から困るのではないのか?と思われていることが原因にあります。

実際、転職先もはっきり決まらず、退職理由も曖昧なまま転職をしてしまうと、転職活動に苦戦したり、転職先でも後悔をしたりする可能性も高いです。

あなたのことを考えて引き止める上司もいますので、どのような思いで引き留めされているのかを考えてみることで、自分自身の中でも「今転職をすべきかどうか?」を判断することもできます。

退職を引き止められる人の特徴

上司や会社の考えによって引き止めがされますが、引き止めにあいやすい人も多いです。

基本的には会社にとって必要な人だから引き止めにあうので、ポジティブに捉えてもらって問題ありませんし、退職の意思が強いようであれば、お断りして退職を決めて問題ありません。

こちらでは、退職を引き止められやすい人の特徴をご紹介します。

仕事ができる人

会社にとって優秀な人材が流失してしまうことは大きな損失になります。会社としても必死で引き止めようとすることも考えられます。場合によっては、給料面や労働条件などを交渉材料に引き止めされるかもしれません。

会社のことが嫌いでなくて、転職先も決まっていないようであれば、応じても良いかもしれませんが、優秀であれば転職先の良い会社も見つかりやすいです。転職などそう何度もするものではありませんので、あなたの考えに素直になって決めていって問題ありません。

周りから好かれている人

仕事ができることと同様に、周りから好かれていて職場の雰囲気を良くしてくれる人は会社にとっても必要です。同じように引き止められやすい傾向にありますし、今まで良好な人間関係が築けていただけに躊躇してしまう部分が出てしまうかもしれません。

本当に良い人間関係が築けていれば、退職後にも一緒に食事に行ったり、仕事上のパートナーになったりと、関係性を続けていくことだってできます。退職してもその会社での人間関係が終わるわけではないので、あなたが本当にやりたいことがあっての転職であれば、なにも迷う必要はありません。

退職理由が曖昧な人

ポジティブな理由で退職を引き止められる人もいますが、ネガティブな理由で引き止められる人もいます。

労働環境が良い会社で、退職理由が曖昧なまま退職しようとする人や退職後に何をするのか分からないような人は、退職後のことを心配されて引き止められることも多いです。

退職後に何をするのかを全て詳しく説明する必要はありませんが、ある程度の計画を見せて退職を伝えれば、引き止められる可能性を下げることができます。

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退職のしつこい引き止めはパワハラ?違法?

「考え直してくれないか?」「もう少し待ってくれないか?」程度の引き止めであれば、コミュニケーションの一環であなたの判断で受け入れたり断ったりできますが、何度も引き止められたり、脅されたりするような引き止めは違法になる可能性も考えられます。

パワハラになるケース

退職したら損害賠償を請求する」 「(独立や競合他社に転職する場合に)妨害してやる」 など、上司の立場を利用して辞めないように圧力をかけたり、脅したりする行為はパワハラに該当する可能性があります。

頻繁に圧力をかけられ、言われる内容も悪質であれば、精神的苦痛を受けたとして慰謝料請求ができたり、脅迫罪などで告訴できたりする可能性があります。

「退職を認めない」は違法行為

日本国憲法では、職業選択の自由が保障されています。よって会社の権限で「退職を認めない」と、従業員の職業を制限させることは原則的にできません。

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

引用:日本国憲法第22条

ただし、労働契約の解除(退職)をする場合には、退職日の2週間前には雇用主に伝えておく必要があります。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ) 第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

引用:民法第627条

裏を返せば、2週間以上前に退職する旨を伝えれば、会社は退職を拒むことができないことになります。ただし、急に退職を申し出れば、後任の採用などで会社がバタバタしてしまうことが考えられます。

なので、会社の規則に決められた内容に沿って退職を伝えることがスムーズです。一般的には「1ヶ月前までに退職を伝える」と決められている会社が多いです。

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退職を引き止めされた時の上手な断り方

人手不足の会社で働く人や優秀な社員は、引き止めにあう可能性も高いです。しかし、お伝えしたように会社は「考え直してくれ」と引き止めることはできても、「退職は認めない」と拒否することはできません。

退職する意思が強いのであれば、しっかり断れば問題なく退職できます。こちらの項目では、引き止めをされた時の上手な断り方をお伝えします。断り方を知っていれば、引き止めを心配して退職を伝えきれない状況から1歩前に進むことができるでしょう。

退職時期を明確に伝える

退職や転職の計画が曖昧だと心配されて退職を引き止められやすくなります。退職理由ややりたいことを全て正直に伝える必要はありませんが、会社や上司が納得してくれるような退職後の計画などはある程度作っておきましょう

また、退職する時期は繁忙期を避けて1ヶ月以上前に伝えることがベストです。業務内容によってはさらに長い方が良いので、引き継ぎに余裕を持たせておけばそれだけ引き止められる可能性を下げることができます。

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ポジティブな退職理由にする

「〇〇が辛い」「〇〇さんと合わない」などとネガティブな退職理由を持ち出してしまうと、高い確率で「他の会社に行っても同じだぞ」などと引き止めにあってしまいます。

「挑戦したい仕事が見つかった」などのポジティブな転職理由であれば、よっぽどのことがない限り反対されずに、「頑張れよ」と応援して送り出してくれることになるでしょう。

引き止めの断り方の例文

引き止めを断る時も感謝を伝えつつお断りすることで、円満なまま退職もしやすくなります。例えば、転職先や家庭の事情などの確定事項があれば、会社側も引き止めをしづらくなります。

  • 「そう言ってもらえてありがたいのですが、すでに転職先が決まっていまして…」
  • 「(両親の関係等で)地元に引っ越す必要があり、退職する必要があります」

また、極力会社に迷惑をかけないようにする配慮を見せれば、会社側も納得せざる得ないですし、円満退社にも繋がります。特に、業務の引継ぎなどは、可能な限り協力する姿勢を見せることが大切です。

  • 「では、採用が終わる○ヶ月後に退職させてください」
  • 「繁忙期が終わる○月に退職させてください」

まとめ

退職を伝える際に引き止められるようなことも十分にあります。特に退職後の計画や退職理由が曖昧な人は「退職して大丈夫なのか?」と、引き止められる可能性が上がります。

また、優秀な社員も会社の大きな損失になるので引き止められやすいでしょう。ただし、会社は「考え直してくれ」と引き止めることはできても、「退職を認めない」と拒否することはできません。

きちんと断れば何も問題ありませんが、しつこく引き止められたり、「退職したら損害賠償請求をする」などと脅されたりするようなことがあれば、パワハラ等の行為を受けている可能性も考えられます。

そのような方は、社内の相談窓口や労働基準監督に相談してみてください。悪質な場合には弁護士への相談も有効です。