転職すれば年収も変動するものです。年収が上がればそれに越したことはありませんが、転職後に年収が下がる人も多くおられます。
もちろん、働く理由は収入だけではありませんし、年収は良くても激務の会社にお勤めの方は、年収を下げてでも転職したいと考えている人も多いでしょう。
こちらの記事では、転職によって年収が下がる理由や、他の人が転職で年収がどこまで下がって許容できるかなどをご紹介していきます。
転職で年収が下がる人の割合は約3割
厚生労働省のデータによると、転職をして年収が下がる人の割合は35.9%という結果になっています。
年代 | 減少 | 1割未満の減少 | 1割以上の減少 |
---|---|---|---|
全体 | 35.9% | 9.1% | 26.8% |
20 ~ 24歳 | 21.6% | 6.6% | 15.0% |
25~ 29歳 | 32.3% | 10.4% | 21.9% |
30 ~ 34歳 | 31.9% | 10.7% | 21.2% |
35 ~ 39歳 | 33.7% | 6.4% | 27.3% |
40 ~ 44歳 | 28.5% | 7.0% | 21.5% |
45 ~ 49歳 | 28.0% | 8.0% | 20.0% |
そのうち、1割以上年収が下がった方は26.8%となっていますので、約4人に1人は年収が大きく下がっていることがわかります。年代別で見ると、20代前半での転職は年収が下がる割合は低く、それ以降はあまり差がありません。
関連:【転職したら年収が上がりすぎて怖い】転職時の年収アップの相場
転職で年収が下がる場合の許容範囲は?
転職後に年収が下がることも想定しておかなくてはなりません。大事なことは、年収がどれほど下がっても今の生活でも耐えられることか?の許容範囲をご自身で決めておくことです。
エン転職のアンケートによると、20代の転職では下がっても100万円までと許容範囲を設けている人が78%と非常に高い割合になっています。
その一方で、30代以上では61%の方が100万円以上年収が下がっても良いと回答をしています。参考:「収入ダウン転職」について|エン転職
年齢が上がれば上がるほど許容範囲が高くなる理由としては、次のことが考えられます。
- もともとの収入が高い
- ある程度の貯金で余裕がある
- 子どもが大きくなり共働きできる
- ある程度年収を犠牲にしないと転職できない
- 体力が減ったので仕事量を減らすことを優先した
転職で年収が大きく下がる理由
転職によって年収が下がることも少なくありません。許容範囲は年齢によって変わりますが、大きく下がる1つの目安として100万円程度を設定しておきましょう。転職で年収が下がる要因として、次のような理由があります。
もともとの年収がある程度高いから
「転職によって100万円以上年収が下がっても許せる」と答えている人は、30代以降に多いです。
30代になるまで同じ会社や職種でコツコツと働き続けていたら、スキルや立場が上がるなどして年収も高くなっている人も出てきます。
元の年収が高ければ、転職によって一般的な年収帯に落ち着いた時に、大幅に年収が下がってしまうことも考えられるでしょう。
未経験分野への転職だから
未経験の業界や職種に転職する場合、基本的に年収も下がる傾向にあります。企業側も未経験求人には低めの年収を設定していることもあり、求職者もある程度年収を下げてでも未経験分野に挑戦することに理解を示している人も多いでしょう。
未経験分野でもきちんと技術を身につけて評価されていけば、将来的に年収が上がって行きやすい会社も多いですので、やりたいことがあるのに目先の年収が下がるだけで挑戦を止めてしまうのはもったいないです。
【関連】30代の転職で未経験の職種は厳しい?手遅れになる前に考えること
役職から外れるから
今の会社で役職に就いている方は、転職によって役職がなくなります。部長職などのある程度の地位で募集している求人もありますが、役職を気にしない転職をする場合には、今より大きく年収が下がることもあるでしょう。
後述する労働環境と関連することでもありますが、役職がなくなることが全て悪いとは限りません。重要な役職は年収も良い分、労働時間やプレッシャーが非常に負担になる場合もあります。
プライベートを優先させるための転職であれば、このようにあえて平社員になって負担を減らすような転職をする人もいるでしょう。
労働環境が改善されるから
転職によって労働環境が変わり、残業時間が減って、その結果年収が下がることもあります。 例えば、毎月5万円の残業手当をもらっていたとします。
それが残業のない会社へ転職し、残業代がなくなった場合、それだけで年収60万円分下がることになります。収入を取るかプライベートを取るかは、その時の状況や考え方にもよりますが、年収が下がることが悪いだけとは限らないのです。
年収が下がりやすい転職の傾向とは
今の職場と転職先の違いによって年収の下がりやすさも出てきてしまいます。上記の内容と被る部分もありますが、年収が下がりやすい転職の種類についてご説明します。
未経験の業界や職種への転職
繰り返しになりますが、未経験の業界や職種への転職は、基本的に年収も下がりやすくなっており、まさに1からのスタートといった形になります。採用する企業側も、求職者に即戦力を求めているのではなく、将来的に戦力になってくれれば良いと思って採用します。
企業の本音とすれば、戦力になるまでの期間は給料も高くしたいとは考えてはいないでしょう。その結果年収も下がりやすくなります。もちろん、きちんと実力や結果を出していけば、それに応えて給料が上がる会社も多いです。
大手からベンチャー企業への転職
大手企業の1つの強みが収入や労働環境の安定です。しかし、昔ながらの古い考えが続いていたり、規模が大き過ぎて何のために働いているのか分からなくなることもあります。
その一方で、ベンチャー企業では個人の頑張りによって会社の業績にも影響しやすく、結果がそのまま給料アップにも繋がりやすい魅力もあります。求人票の年収では大手よりもベンチャーの方が安い傾向にありますので、転職直後は年収が大きく下がる可能性が高いです。
地方企業への転職
家族ができたことなどを機にUターンやIターンで、地方で働く選択を取る人もいるでしょう。地方企と首都圏の企業の年収格差は最大で2割ほどあります。(参考:都心vs地方の最大格差は2割!Tech総研)。
地方企業への転職によって大幅に年収が下がってしまうことも考えられます。ただし、都市圏よりも家賃や物価などが低くなる部分もありますので、収入が下がっても支出を抑えて対処できることも多いです。
年収が下がる会社への転職で後悔する理由
このように、転職することによって年収が下がってしまうことも十分にあり、転職する人もある程度は受け入れて転職に踏み切っているようです。しかし、次のような状況で年収が下がってしまえば、転職後に後悔してしまうようなこともあります。
会社や業界そのものが年収が低いままの可能性もある
転職後に一時的に年収が下がることがありますが、いつまで経っても年収が上がらない会社や業界というのもあります。
年数が経つにつれて、周りや元の職場と比較して、全然年収が上がっていないことに後悔してしまう日が来てしまうかもしれません。
転職時に年収を気にする場合には、求人内容での年収だけではなく、会社の平均年収や同業他社の年収の傾向なども確認しておくと良いでしょう。
次の転職でも年収が低くなる
転職先で収入が下がることにより、さらに次の転職を考える人も出てくるかもしれません。転職を繰り返していくうちに徐々に求職者の立場が悪くなり、給料や労働条件が悪くても転職せざるを得ないことにもなってしまいます。
基本的に転職時には、前職の年収をベースにして決定されることが多いので、できる限り転職を繰り返さないように、企業研究と自己診断をしっかりしておきましょう。
年収が低いと生活面で支障がでる
年収が下がれば、それだけ支出も抑えなくてはなりませんが、人は一度上げた支出や生活水準をなかなか下げられないこともあります。
例えば、100万円年収が下がったとすれば、単純計算で毎月約8万円の収入が減ったことになります。月に8万円も節約するとなると、相当な工夫が必要になるでしょう。
できなければ一時的にでも貯金を切り崩したり、家族に協力をしてもらったりなどの対策も考えなくてはなりません。
また、後述しますが大幅に年収が下がることにより、税金の負担が一時的に増えてしまうようなこともあります。年収が下がっても転職したいと考えている方は、ある程度お金に余裕を持たせておいた方が安心です。
【関連】転職してよかった人の割合は83%!転職経験者200人に聞いたアンケート
転職で年収下がる場合の注意点
年収が下がる転職では、上記のような後悔することが出てきてしまうかもしれません。年収が下がるという部分だけ見ればデメリットがある転職ですので、年収が下がる以外に不満や困ったことが出てこないように慎重になって転職するようにしましょう。
年収を理由に内定を辞退するのもOK
年収を理由に内定を辞退することは問題ありません。しかし、年収だけで内定辞退をすることがもったいないこともあります。
数年働けば将来的に年収が大きく上がる会社もありますし、残業時間が少ないので1時間あたりの給料は転職先の方が良いようなケースもあります。
また、あなたにアピールできる実績や資格などがあれば、年収アップの交渉や手当等の制度によって年収を上げられる可能性が残っているかもしれません。
税金面も考慮しておく
所得税や住民税などの税金は、前年の所得に応じて金額が決まります。100万円を超えるくらいの大幅な年収減があった場合には、転職後の手取りがかなり低く感じてしまう可能性があります。
会社員の税金は、会社側が手続きを行ってくれて、給料から天引きによって納めるようになっています。 大きく年収が下がってしまった場合には、前年の高い年収に対する税金を今の下がった職場の給料から納めた上であなたの手取り給料になります。
そのことによって、一時的に手取りが大幅に下がってしまったと感じてしまうことも出てくるでしょう。また、転職が決まるまでの間の会社に属していない期間が長かった場合には、住民税などを一時的に自分で収めなくてはならないこともありますので注意が必要です。
給料が下がった場合にもらえる手当
雇用保険には、転職先の給料が下がった時に貰える『就業促進定着手当』というものがあります。手当を受け取る条件は、就職促進給付の中の『再就職手当』を受け取った人で半年間の収入が離職前より下がっていることが条件です。
※再就職手当とは:失業保険の基本手当が支給されている期間中の、早期に再就職先が決まった時に受け取れる手当
受け取れる金額は、失業保険の基本手当の金額と残り日数をかけ、そのうちの30%or40%が受け取れます。ただ、上限がありますので多くても10万円程度になってくるでしょう。
いずれにしても失業保険の『再就職手当』を受け取っていることが条件になり、手続きも必要ですので、詳しくはハローワークに相談しに行かれることをおすすめします。
まとめ
転職によって年収が下がることは十分にあり得ますし、珍しいことでもありません。大事なことは、自分自身が年収以外に求めている部分をハッキリさせ、転職後のお金についても考えておくことです。
激務で年収が高い会社よりも、定時に帰れてそこそこの年収がもらえる会社を求めるような方も多いでしょう。転職はそう何度もするものでもありませんし、転職を繰り返すようになってしまえば、後々自分を苦しめてしまうことにもなりますので、後悔のない転職に向けてしっかりと準備をしていきましょう。