元介護従事者のフリーライター。介護業界に入職するも、心身のバランスを崩し退職。その後一般企業で販売員や事務員を経験。
少子高齢化により、求人市場は現在売り手優位になっており、どの業種も優秀な人材の確保が課題となっています。
なかでも介護業界の人手不足は深刻で、改善の兆しが見えません。この記事では、介護業界の人手不足の原因と、職員の仕事が楽になる方法を紹介しています。
介護施設の人手不足がやばい、どうにかして楽になる方法を知りたいという人は、ぜひ最後までご覧ください。
介護業界の人手不足は深刻
介護業界の人手不足は深刻です。
厚生労働省の「介護人材の確保について」の資料によると、従業員が不足していると回答した事業者は、訪問介護で38.1%、施設介護で18.2%となっています(24年度の回答)。
高齢化が進み、介護を必要とする人は増えていくのに、介護を提供する側の人手がなかなか集まらないので、人手不足に陥っています。
なかには65歳以上の介護職員がいたり、日本語に慣れない外国人労働者を職員として迎えいれたりする施設もあるのです。
人手不足による介護施設の閉鎖も
介護施設が閉鎖する原因のひとつに人手不足があります。
設備や資金、利用者がいても、人手が集まらなければ、介護施設は満足な経営ができません。
介護職は未経験の人材も多く、教育には時間がかかります。その結果、経験者や資格を持つ人に、負担が集中しがちになっています。
施設を運営するだけの人材を確保できず、満足なサービスが提供できなくなった結果、閉鎖してしまう事業所も少なくありません。
介護業界はいつも人手不足に悩まされているのです。
介護業界が人手不足の原因
介護業界の人手不足は、何が原因なのでしょうか?ここでは、なぜ介護業界が人手不足になってしまうのかを解説します。
待遇への不満からやめる人が多い
介護業界が人手不足の原因には、他業種に比べてハードな仕事内容のわりに、給料が少ないことがあります。
夜勤がある介護施設では、生活のリズムが崩れやすいもの。加えて頻繁に利用者を介助する仕事は、肉体的にもきついものがあります。
介護業界の給料は、少しずつ改善されてきていますが、「こんなに働いているのに、これだけしかもらえないの?」と感じる人も多くいます。
仕事にやりがいを感じていても、働きに見合った報酬を受け取れないと、やってられないと感じる人も多いでしょう。
介護を必要とする人が多すぎる
現在、介護を必要とする人は、80歳代前半では約3割、85歳以降は約6割にも上ります。
年代別の人口に占める要介護認定者の割合は、40~64歳では0.4%、65~69歳では2.9%ですが、加齢とともに急速に高まり、80~84歳では26.4%、85歳以上では59.8%となっています。
医療技術が発達することで平均寿命が伸びるとともに、出生率の低下から若年層の人口は減少してきています。
従来、介護は家族がするものという認識があり、介護サービスを利用する人は少数でした。しかし、共働き家庭が増え、家庭での介護が困難になり、事業者による介護を望む人も増えてきました。
高齢化により介護ニーズは増加していても、それに応えられる人材の確保と育成が難しく、介護業界は人手不足に悩んでいるのです。
未経験での入職者が多い
介護業界は人手不足であり、常に職員を募集している事業者も多くあります。
しかし、入職希望者ならば誰でもいいというわけではありません。無資格者や未経験者ばかりが集まってしまっては、満足のいく介護サービスを提供できなくなります。
小さなミスから、利用者の命に関わる事故が発生する危険性もあるのです。
未経験の入職者を1人で作業させるには、不安があり、先輩職員が付き添ったり、作業を確認したりする手間が必要です。
その結果、新しい人を雇ったのに、忙しさが変わらないどころか、もっと忙しくなった気がすると感じる人もいるでしょう。
そのため施設側も、未経験の人を採用しづらく、人手不足が解消されない結果になってしまいます。
施設運営側の理解が足りない
介護現場の人手不足の原因に、運営側が現状を理解していないことがあります。
「今できているんだから、もう少し平気だろう」「このぐらいの追加は、なんてことはないだろう」このような軽い気持ちで、作業を追加されてしまうことも。
利用者ファーストを極めるため、職員側の負担を無視した提案をされることも頻繁にあるのです。
たとえば、人件費削減のため、業者に依頼していた清掃作業を職員が受け持つことになったり、利用者が楽しめるような、イベントを打診なく増やしたりと、さまざまな要望が運営側から出されることがあります。
運営側の提案は利用者にとっては良いことでも、職員にとってはつらい職場になってしまいがちです。
売り手市場で入職者が少ない
そもそも、現在はすべての業界が人手不足になっています。
介護業界は未経験でも始めやすく、絶対的な需要があるため、何歳からでも始めやすい仕事です。
そのため、今あえて介護職を選ぶ人は少なくなっています。
もちろん、介護職はやりがいがあり、人の役に立てる素晴らしい仕事です。
しかし、きつい仕事であるというイメージから、介護職に就きたい人でなければ、入職希望者は少なくなってしまいます。
人手不足で仕事がつらいときの対処法
介護業界の人手不足は、職員ひとりの力で解決できるものではありません。ここからは、人手不足でも仕事を乗り切るための対処法を紹介します。
業務分担を徹底する
介護施設でありがちなのが、同じ立場なのに仕事の濃度に差があることです。
仕事が早い人は次から次へとやることを見つけて動きます。一方で、ゆっくりする人はひとつのことを丁寧に片付けていきます。
確かにテキパキと動いてくれる人がいれば、仕事は早いのですが、早く動いてくれる人ばかりに仕事が集中し、ゆっくり仕事をしている人との仕事量の差が激しくなります。
とくに責任感が強い人は、仕事を抱え込んでしまい、同僚に助けを求められず、苦しんでしまうこともあるでしょう。
他の職員と積極的に交流し、忙しいときには他の人に頼る。
疑問があったらすぐに相談する流れを作っておけば、自分の仕事だけに集中しやすくなります。
積極的なコミュニケーションをとり、自分にだけ仕事が集中しないよう立ち回ることも大切です。
無駄な業務をなくす
介護職の人手不足を緩和するためには、職場環境を整備する必要があります。
介護施設の中には対面を重視し、無駄な業務を行っている施設も多くあります。
たとえば、忙しい朝の時間帯に施設長による朝礼を行ったり、介助に充てるべき時間を、清掃に当てたりと、利用者の介助に直接関係のない業務はなくしていくべきでしょう。
また、介護の方法をしっかり勉強すれば、今までよりも楽に介助できる方法が見つかるかもしれません。効率よく業務を行うことで、人手不足を感じにくくできるでしょう。
上司に訴える
人手不足でやばいと感じるときは、気軽に上司に相談してみると良いでしょう。
きちんと現場が回っていれば、上司は人手不足に気づいていない可能性があります。
待遇改善を訴えることで、人員募集やシフトの調整など、さまざまな融通をきかせてもらえるかもしれません。
人手不足による忙しさから心身のバランスを崩す前に、積極的に同僚に相談して、上司に待遇改善を訴えてみると良いでしょう。
職場を変えてみる
介護業界で働いていて、人手不足がやばいと感じるときは、職場を変えてみるのもひとつの手です。
介護施設によっては、利用者だけではなく、職員の負担も考えてくれる施設も多くあります。
人手不足の職場から、他の職場に移るのは、申し訳ないと思うかもしれませんが、改善案を提示しても、一向に改善されない場合は、自分が潰れてしまう前に身を引くのも大切です。
今までの施設で培ってきた経験があれば、どこの施設でもやっていけるでしょう。
介護業界はどこでも人手不足です。どうしようもなくなったら戻ってくるという気持ちで、他の施設や他業種にチャレンジしてみてもいいかもしれません。
まとめ
介護業界の人手不足が深刻ですが、少子高齢化や待遇への不満から改善の兆しが見えないのが現状です。
人手不足を解消するには、待遇の改善や社会的イメージの向上が必要になっています。
職員にできる対応としては、人手が少なくても回せるよう業務を効率化する、人手が足りないことを具体的に運営側に訴えるなどがあります。
運営側の理解を得られないときは、自分を守るために転職を考えてもいいかもしれません。