これから転職を考えている方や今の会社の残業量に疑問を抱いている方などは、他の会社がどの程度残業しているか気になることでしょう。
残業があることで給料も良い会社もありますが、あまりにも残業が多い会社であれば、仕事して帰って寝るだけの生活が続いて、プライベートの時間がなくなってしまうことにもなります。
今いる会社や転職先の候補に挙げている会社にどれくらいの残業があり、平均的な残業時間よりも多いのか少ないのかを判断する材料にしてみてください。
残業が多いかどうかの基準は?
残業が多いかどうかは、他の会社の平均残業時間と比べてみることが一番です。これまで毎月60時間残業をしていた方であれば、20時間残業でも少ないと思うでしょうし、残業がほとんどない会社で働いていた方であれば、20時間残業でも多いと思うでしょう。
そこで、まずは平均残業時間と厚生労働省が決めた残業時間の上限について知っておきましょう。
平均の残業時間は25時間程度
オープンワーク株式会社が行った「日本の残業時間定点観測データ」の発表によると、全業種の平均残業時間は月24.66時間であることが分かりました。
この25時間を1つの目安にすることができ、これより多く残業している会社に勤めているようであれば、残業が多いと判断することができるでしょう。
月25時間残業といえば、月20日出勤で1日あたり1.25時間残業していることになります。毎日コンスタントに2時間以上残業していれば、平均よりも残業が多いと判断できます。
残業時間の上限は原則「月45時間」
また一方で、政府の方で残業時間の上限として設定されているのが「月45時間」です。会社の方でも、月に45時間残業を超えそうなペースで働いている人がいれば、これ以上残業しないように注意されるようなことがあったのではないでしょうか?
しかし、これはあくまでも原則であって、繁忙期や機械等のトラブルで残業が必要な状況になった場合には、年6ヶ月は45時間残業を超えて良いとされています。
また、業務・業種によっては上限45時間が適用されない特殊なケースもあります。いずれにしても、残業の上限45時間は、従業員の働き過ぎを防ぐために作られた法律ですので、事情があるにせよ上限を超えて働いている場合には、残業が多いと言うことができます。
給料が良かったり、一時的に残業が多かったりする場合には、まだ検討の余地がありますが、あまりにも長時間残業が続くようであれば、十分な転職理由になり得ます。
残業が多い会社の特徴
会社としても残業が増えれば労基署からも目をつけられ、人件費も上がってしまうため、できる限り残業を減らしたいと考えています。
しかし、それでも残業が多い会社は、何かしらの理由があって残業が多くなってしまっているのです。こちらの項目では、残業が多い会社の特徴をご紹介します。
成果に厳しい、ノルマがある会社
会社としては従業員一人一人に成果を求めていますが、そのハードルの高さは会社や業務内容、給料などによって様々です。
特に「営業」などは、一人ひとりの成果が数字としてハッキリと表れる仕事のため、会社から「契約〇件」「テレアポ〇件」などノルマを課されることがあります。
会社から無謀なノルマを課されて、残業が多くなってしまうのはよくあるパターンのひとつです。また、従業員数が少ない企業であれば、従業員一人に対して求める成果も大きく、残業時間も必然的に多くなってしまいがちです。
結果的に規模が小さい中小企業やベンチャー企業などは、このような理由から残業が多くなっている会社も多いです。
労働集約型の事業をしている会社
労働集約型の事業とは、簡単に言うと従業員の労働力に頼っている事業のことで、農林水産業などの一次産業や流通・サービス業などの三次産業に多くなっています。
つまり、人がいないと利益が出にくい事業をしている会社のことですが、会社としては人件費をあまり使えなかったり、離職等で人手不足に陥っていたりして、今いる従業員だけで業務を賄おうとしてしまうため、一人当たりの労働量が多くなってしまう傾向にあります。
その結果、残業が多くなりがちで、従業員の負担と離職者が増えて、残った従業員にさらに負担がかかってくるような悪いループに入ってしまう会社も少なくありません。保育士や介護士などの人材不足も、労働集約型事業の問題点の典型例と言えるでしょう。
従業員が少ないベンチャー企業
上記とも関連していますが、ベンチャー企業やスタートアップ企業が会社の利益を安定させるためには、少ない従業員一人ひとりの労働力が鍵になっており、その結果負担が大きくなります。
労務管理がずさんな会社もあり、残業した割にはきちんと残業代が支払われないような問題も生じやすいです。
その一方で、「短時間で効率的に成果を出す」「従業員に意欲的に働いてもらう」ことに重きを置いている会社もあり、ベンチャー企業やスタートアップ企業が必ずしも残業が多いとは限りません。
ワークライフバランスに重きを置いているベンチャー企業は、週休3日制やフレックスタイム制を取り入れていることもあります。
残業が多い職種ランキング
こちらの項目では、残業が多い職種をご紹介します。大手転職サイトdodaによると、職種別の残業時間が多かった職種が以下の順位で出されていました。
順位 | 職種 | 平均残業時間 |
---|---|---|
1 | 設計監理/施工監理/コンストラクションマネジメント | 38.3時間 |
2 | プロデューサー/ディレクター/プランナ | 32.5時間 |
3 | 施工管理 | 31.8時間 |
4 | 建築設計/デザイン/積算/測量 | 29.8時間 |
5 | 人材サービスの営業 | 29.2時間 |
上記は職種分類をさらに細かく分けた職種ですが、5位以下も含めた大分類の職種で残業が多かった職種は、次の4種でした。
- エンジニア
- クリエイティブ
- 営業職
- 企画/管理
エンジニアやクリエイティブ系の残業が多い理由としては、モノ作りに関わる職種では納期が決められていることもあり、期限内に終わらせるために残業で対応していることが考えられます。
反対に事務・アシスタントは平均残業時間が10時間程度のものが多く、残業が少ない職種ということができます。
残業が多い業界ランキング
厚生労働省によると、残業が多い業界は次の通りです。
順位 | 職種 | 平均残業時間 |
---|---|---|
1 | 運輸業/郵便業 | 26.2時間 |
2 | 情報通信業 | 16.8時間 |
3 | 電気・ガス業 | 16.6時間 |
4 | 製造業 | 16.4時間 |
5 | 教育/学習支援業 | 16.3時間 |
運輸・郵便業が頭1つ抜けて残業が多い結果になりました。運輸・郵便業に残業が多い理由としては、インターネット販売などで個人に対しての配達の需要も高まり、人員が不足していることが考えられます。
需要は高くなっているにもかかわらず、配達は上記のように労働集約型の仕事がほとんどで、残業に頼らざるを得ない状況になっていることが理由にあるでしょう。
一方で、労働時間が長い業界として次の順番になりました。
順位 | 職種 | 平均労働時間 |
---|---|---|
1 | 運輸業/郵便業 | 179.0時間 |
2 | 建設業 | 172.3時間 |
3 | 飲食サービス業 | 172.2時間 |
4 | 製造業 | 166.8時間 |
5 | 生活関連サービス業 | 166.1時間 |
労働時間の長さだけに限定すると、サービス業が上位にランクインしてきました。これらの業種は、休日が土日固定ではなく、休日が少ない傾向にあり、残業ではなく労働時間そのものが長くなる傾向にあると考えられます。
残業理由ランキング
それでは、残業が多い会社はどのような理由で残業が多くなってしまうのでしょうか?こちらの項目では、ネットリサーチのティムズドライブの調査結果を参考にしながら残業が多い理由を解説していきます。
仕事の量が多すぎる
定時で終わらないような仕事量がデフォルトで用意されている会社では、必然的に残業時間が増えてしまいます。売上を落とさずに一人当たりの仕事量を減らすためには、従業員を増やすか効率を上げるしかありません。
しかし、採用や業務を効率化するための投資をする余裕がなく、慢性的に残業が多くなってしまっている会社も少なくありません。また、このような会社は、離職率が高い傾向にもあり、従業員を採用してもすぐに辞められて、常に人手不足に陥っていることも多いです。
仕事の割り振りに問題がある
仕事の振り分けが不適切で一部の従業員に仕事が集中しているような会社も少なくありません。 一部の部署や従業員には莫大な量の仕事が割り当てられ、一方で一部の従業員は暇をしているような状態です。
部署や取り扱い商品によって、注文数や忙しさ、必要人数など変わってきますので、管理する立場の人間が適時人員調整を行うべきですが、そのような人がいないか、現場を把握できていないような状態の時に、仕事量の偏りが起こってしまいます。
無駄な打ち合わせが多い
参加する必要がない打ち合わせや朝礼などを強制させられて、その結果に業務が進まない状態になっている会社もあります。打ち合わせや朝礼が増えれば、その間仕事がストップしてしまいます。
さらには、打ち合わせ等に使う資料作成のための時間も取られてしまいます。昔からの風習で全員集合の打ち合わせや会議、朝礼などが頻繁にあって、そのことが業務を圧迫して残業を増やしているのであれば、非効率な働き方をしているのかもしれませんね。
もちろん、打ち合わせの場で意見を出し合ったり、コミュニケーションを取ったりすることも大事ですが、バランスが悪いと残業が無駄に増えてしまう結果になります。
まとめ
ここ数年は、厚生労働省が主体の働き方改革によって残業を減らしている会社も増えてきました。しかし、今いる従業員だけでは対応しきれない仕事を受注している会社や人手不足に陥っている会社などは、今でも残業が多い傾向にあります。
平均的な残業時間は、月25時間、毎日1〜2時間程度が目安です。これより多いようであれば、残業が多い会社だと言えるかもしれません。人生において仕事が全てではありません。
理想のライフワークバランスを実現するためにも、あまりにも残業が多くて負担が生じているようであれば、転職も積極的に考えるべきでしょう。
転職の結果、給料はほとんど変わらずに、毎月の労働時間が数十時間減るようなことも珍しくありません。他の会社も調べてみて、今より環境を良くできるのであれば、ぜひ転職も考えてみて下さい。