介護士が仕事をしているところ

この記事は、実際に介護職の仕事でメンタルをやられ、休職経験のあるライター(30代女性)が執筆しています。当時の体験談は「私が介護職でメンタルをやられた3つの理由」をご覧ください。

介護職は激務から、メンタルをやられて体調を崩す人が多い仕事です。実際に厚生労働省の資料によると、心身ともに体調を崩して退職する人は約2割にのぼります。

職場を辞めた理由(介護福祉士の回答)
退職理由 割合
結婚、出産・育児 31.7%
法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった 25.0%
職場の人間関係に問題があった 24.7%
収入が少なかった 23.5%
心身の不調(腰痛を除く)、高齢 22.0%
労働時間・休日・勤務体制があわなかった 18.9%

【引用元】介護人材の確保について - 厚生労働省(PDF)

また、医療・福祉業界は精神障害による労災請求が最も多いというデータもあります(表2-1 精神障害の労災補償状況|厚生労働省)。

この記事では、介護職でメンタルがやられる理由とその対処法、介護職で働くメリットをご紹介いたします。介護の仕事でメンタルに限界を感じている人は、ぜひこの記事を参考にしてストレスへの対処法を実践してみてください。

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介護職でメンタルがやられる7つの理由

介護職でメンタルがやられる理由は大きく分けて7つあります。介護職は他の業種と比べて心も体も弱ってしまうことの多い仕事です。ここでは介護でメンタルをやられる理由を紹介します。

人手不足で仕事量が多い

介護業界の人員不足は深刻で、少子高齢化が進み介護を必要とする人に比べて、対応できる介護職員の数は不足しており、今いる職員に負担が集中しがちです。

出勤してから退勤するまで、一日中動き回らなければならないことも多いでしょう。介助以外にもレクリエーションの準備をしたり、利用者の家族に連絡をとったりと介護職の業務は数多くあります。

利用者の増加によって仕事量は増えるのに、対応にあたる人数は変わらないため、激務からメンタルをやられる人も多いのが現状です。

給料が安く、仕事量に見合わない

介護職でメンタルがやられる理由の2つ目は、給料が仕事量に見合わないことです。 厚生労働省の調査によると、介護職の月収は平均316,610円、介護事務員の平均月収は301,940円となっています。

介護従事者等の平均給与(令和3年9月)
職種 平均給与
介護職員 316,610円
看護職員 369,210円
生活相談員・支援相談員 338,370円
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士又は機能訓練指導員 350,080円
介護支援専門員 353,560円
事務職員 301,940円
調理員 259,270円
管理栄養士・栄養士 311,190円

【引用元】令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 - 厚生労働省

介護職のハードな仕事量に比べて、給与額の少ないことがわかります。どれほど仕事にやりがいを持っていても、見合った報酬が得られなければ、仕事へのモチベーションを保ちにくいですよね。

近年では介護職の報酬が見直されつつありますが、依然として業務内容に応じた報酬が得られていない職員も多いため、メンタルをやられてしまう人もいるでしょう。

施設内でのいじめが多い

介護施設は利用者と職員のみで関係が作られていることが多く、外部の目が届きにくい環境にあります。閉鎖空間ではストレスのはけ口として、パワハラやいじめが発生しやすくなります。

  • 必要事項を教えてもらえない
  • 悪口や陰口を言われる
  • 複数人必要な仕事なのに手伝ってもらえない

精神的に追い詰めるものから、利用者の安全にかかわることまでいじめの内容はさまざまです。監視の目も多くないので、いじめが表面化しないままメンタルをやられてしまう人もいるでしょう。

施設の方針が自分に合わない

施設の方針が自分に合わない、というのも介護職でメンタルがやられる理由のひとつです。介護に対して自分なりの理想を持っている人は、施設の方針に違和感を覚えてしまうと働きづらくなってしまいます。

入職前は「利用者に寄り添った、素敵な運営方針だ」と思っていたのに、入職してみると効率的に動くことばかりを求められる人も多いでしょう。自分の理想とする介護と、上から求められる介護とのギャップに苦しみ、メンタルがやられてしまう人もいます。

夜勤が心身ともにきつい

介護職でメンタルがやられる理由として、夜勤業務がきついこともあげられます。

入居型の施設だと、職員が夜勤対応をおこなうのが一般的です。夜勤は日中と比べて対応する介護職員の数が少なく、負担がひとりに集中します。

利用者が急変したときの対応や、一人ひとりに合わせた介助など、日中は複数人でしていたことも、夜勤では1人で対応しなくてはならない場面もあります。

さまざまなことがプレッシャーとなり、夜勤をきついと感じる人もいるでしょう。夜勤で生活のリズムが崩れることも、介護職員には大きな負担となり、メンタルがやられる一因となっています。

クレームの対応がきつい

介護職がメンタルをやられる理由として、クレーム対応のきつさもあげられます。

介護施設は利用者を最後までお世話することも多く、そのぶん利用者とかかわる時間は長くなります。利用者として短期間なら我慢できても、長期間となれば不満が言動に出てしまうことも多くあることでしょう。

介護職員がどれほど丁寧に介助しても、利用者の思い通りに体を動かすのは困難です。苛立ちや寂しさから利用者にきつい言葉を投げかけられることは多くあります。

ときには利用者の家族から、理不尽なクレームを受けたりすることもあるでしょう。 きついことを言う利用者とも長期的に向きあわなければならないので、メンタルをやられる介護職員も多くいます。

将来に不安がある

介護職は将来への見通しが立てづらく、不安に思う人も多い仕事です。介護職は未経験でも就業可能ですが、介護関連の資格がなければ報酬は少ない傾向にあります。

介護職は成果報酬制の仕事ではないので、昇給の基準があいまいです。資格を取って手当をもらわない限りは、給料が上がりづらいことも考えられます。

資格を取るにしても、激務の中では充分な勉強時間が得られず、仕事との両立が難しいという人もいるでしょう。激務で体調を崩して働けなくなった場合を考えると、介護職員として働き続けるのは不安があるという人も多くいます。

【関連】介護職を辞めたいと感じる8個の理由と対処法

私が介護職でメンタルをやられた3つの理由

介護職はメンタルをやられることが多い職業です。 実際に私も希望を持って介護施設に入職しましたが、すぐにメンタルをやられて休職、復帰ができずに退職を経験しました。ここからは私が、介護職でメンタルをやられた理由をご紹介いたします。

理由1:忙しくて充分な教育をしてもらえなかった

私が介護職でメンタルがやられた理由の1つ目は、先輩から充分な教育を受けられなかったことです。

入職時には同期が3人いましたがシフトはバラバラで、1人しか先輩に指導を受けられず、あとは同期間で教え合いをしなければなりませんでした。当然先輩から直接指導を受けた人と、又聞きをしただけの人の間には理解の差ができます。

忙しさを理由に説明だけで、1人で実践に向かわされることも多くありました。よくわからないまま独り立ちさせられたので、自分のやり方があっているのか、常に不安でした。

理由2:人手不足で、心をこめた介護ができなかった

私が介護職でメンタルがやられた理由の2つ目は、自分の納得する介護ができなかったことです。

「〇〇さんの食事介助が終わったら、▲▲さんの入浴介助に行かなきゃ。時間がないから、〇〇さん早く食べてよ!」
「■■さん、またトイレ? 少しは我慢してくれたらいいのに……」

私の勤めていた施設でも人手不足は深刻で、時間も人手も足りずに心の余裕がなくなってしまい、自分勝手なことを考える瞬間がありました。自分の思考に愕然とし、理想とする介護と現実とのギャップに苦しみました。

理由3:きつい仕事の押し付けあいがあった

私が介護職でメンタルがやられた理由、3つ目はきつい仕事の押し付けあいがあったことです。 介助の方法は同じでも、利用者の状態によって職員の負担は大きく変わります。

同じ排泄介助でも、見守るだけのものから全介助まで、利用者によって職員の介入具合もさまざまです。私の働いていた施設では、簡単にできる仕事はすぐに誰かがやってしまい、体に負担の大きい介助ばかり回されることが多くありました。

給与は同じなのに、自分ばかりきつい仕事を押し付けられている不満が、メンタルを崩す一因にもなったのだと思います。

介護職で働く3つのメリット

介護職は心身ともに負担の大きい仕事ですが、同時に大きなやりがいのある仕事です。ここからは介護職として働くメリットをご紹介いたします。

利用者から直接感謝してもらえる

介護職は利用者と直接かかわる仕事なので、感謝の言葉をよくかけられます。介護施設では利用者の食事や排泄、入浴といった生活にかかせない行為のサポートが主な仕事です。

利用者の生活に密接しているため距離が近くなりやすく、感謝の言葉をかけられることが多くあります。

自分のサポートで利用者の活動量が上がることもあり、大きなやりがいを感じられるでしょう。心をこめてやった仕事に、あたたかい言葉をもらえば「次もがんばろう!」と前向きな気持ちになれます。

家族の介護に役立つ

介護職は将来的に、家族の介護に役立ちます。自分の周囲が介護を必要としたときに、介護で気をつけるべきポイントや、保険の手続きなどがわかるため、仕事で身につけた知識を役立てられます。

利用する施設を選ぶ際にも介護職の経験が役に立ちますし、施設の職員に確認するべきポイントもわかります。介護に関する知識が身についているので、自宅で介護をすることになってもあせることは少ないでしょう。

求人数が多く、仕事先に困らない

介護職は求人数が多く、就職先に困りません。 求人情報誌を見ても介護業界の人員不足は深刻で、多くの人材を求めているのがわかります。

介護の経験があれば即戦力としての活躍が期待できるため、就職先に困ることはないでしょう。 介護に関連する資格を持っていれば、より良い条件の仕事を選べます。

【関連】30代女性の転職は資格・スキルなしだと厳しい?おすすめの資格や職種

介護職でメンタルが限界なときの5つの対処法

介護職にもメリットはありますが、自分が疲弊しきるまで働くべきではありません。自分でストレスの限界を見極めることが大切です。

ここでは限界に気づかず体調を崩してしまう前に、メンタルが限界なときにおすすめの対処法をご紹介いたします。

上司に相談する

介護職でメンタルが限界になったら、まずは上司に相談してみましょう。介護職で体調を崩す人は多いので、上司もさまざまな経験を積んでいます。

夜勤がつらいのならシフトを見直してもらう、職員によって仕事量に差があるのなら改善してもらえるように相談しましょう。自分が何をストレスに感じているのかを明確にして上司に相談するのが大切です。

仕事だと割り切って、キャリアアップのために働く

介護職は負担の大きい仕事ですが、キャリアアップも充分に可能です。 介護福祉士やケアマネージャーなどの資格を取れば、資格手当もつき仕事内容も変わってきます。

仕事は仕事と割り切って深く考えずに、つらい時間は資格を取るための修行だと捉えることも大切です。 キャリアアップして就業環境が変われば、感じていたストレスもましになっていることでしょう。

リフレッシュ休暇をとる

介護職でメンタルが限界に感じているときは、リフレッシュのために休暇を取ってみるのもおすすめです。 施設によっては福利厚生の一環として、リフレッシュ休暇を設けているところもあります。

介護職にストレスを感じている人は「帰宅してもセンサーベッドの音が聞こえる気がする……」という人も多いのではないでしょうか。

一度仕事のことを忘れて休んでみるのも、ストレスへの対処法として効果があります。 ストレスで体調を崩す前に休暇が取れるか、就業先に確認してみるといいでしょう。

仕事とは関係のない趣味に没頭する

リフレッシュ休暇が取れない職場でも、息抜きとして仕事を忘れる時間は必要です。いつも仕事のことばかり考えていては、ストレスはたまる一方になってしまいます。

ライブに行ったりエステに行ったりと、仕事とは関係のない趣味に時間を使い、ストレスを発散しましょう。 体調を崩す前に、できる限りの方法でメンタルを改善できるよう、心がけましょう。

転職も視野に入れる

介護職でメンタルが限界になってしまった人は、仕事を変えることも選択肢の1つとして取り入れましょう。いくらやりがいのある仕事でも、あなたの心身の健康が一番大切です。

体調を崩す前に働く施設を変えてみたり、違う業種に挑戦してみたりするのもひとつの方法です。介護職は人と接することが多く、高いコミュニケーション能力が身につきます。

介護職で身につけた経験は他の職種でも役に立つので、メンタルが限界になってしまった人は転職も視野に入れて行動してみましょう。

【関連】介護士におすすめの転職サイト7選と利用する際の注意点

まとめ

介護職はとてもやりがいのある仕事ですが、職員にかかる負担も大きく、メンタルをやられる人も多くいます。仕事でメンタルが限界になってしまった人は、体調を崩す前に正しく対処して自分の身を守ることを優先しましょう。

介護職で身につけた経験は、どこに行っても通用します。一度介護の仕事から離れてみて、自分に本当にあった仕事を探してみるのもいいでしょう。 ぜひこの記事を参考に、メンタルを守る対処法を実践してみてください。