どうしても入社したい企業がある場合、経歴詐称をしてでも採用されたいと考える人が出てくるかもしれません。
「経歴詐称をしてもバレないだろう」 そう考えている人はいないでしょうか。
結論から申し上げますと、バレる・バレないに関わらず、経歴詐称をすることはやらないようにしてください。
バレた場合には、解雇や罪に問われる可能性、会社の信用を損ねたとして損害賠償請求されたりすることもあり得るでしょう。
こちらでの記事では、次のような内容をご紹介します。
- 経歴詐称とはどのようなものか?
- 経歴詐称にはどのような方法があるのか?
- 経歴詐称がバレる経緯
- 経歴詐称がバレた場合の結末
- 経歴詐称をしてはいけない理由
繰り返しますが、狙った仕事に就きたいからといって経歴詐称をしてはいけません。
正直な経歴や資格で就ける仕事を見つけたり、マイナスな経歴をカバーできるように面接対策をしっかりすることを考えていきましょう。
経歴詐称とは
経歴詐称とは、履歴書や職務経歴書に書く内容、面接で答える内容で嘘をつく行為です。
履歴書等に書かなくてはならない経歴には、次のような内容があります。
- 職歴
- 在籍年数
- 学歴
- 資格・免許
- 雇用形態(正規社員・非正規社員などの違い)
- 職位
- 年収
- 業務内容
経歴詐称の例
こちらでは、実際の経歴詐称の例を挙げてみます。上記のように経歴にはたくさんの種類がありますので、次の3つの項目に分けてご紹介します。
- 職歴・役職
- 学歴・資格
- 年収
職歴や役職を偽る
経歴詐称でも多い内容が職歴の詐称でしょう。働いていない空白期間や短期間で転職を繰り返している場合などは、転職時にマイナスポイントになってしまいます。
職歴や役職に関係する経歴詐称には、次のような例があります。
- 架空の会社に勤めていたことにする
- 3ヶ月で辞めた会社に3年在籍したことにする
- 複数転職している場合に何社分かを無記入にする
- 役職を偽ってアピールする
【関連】転職回数が多いと人生終わり?転職を繰り返す人の性格の特徴や末路
学歴や資格を偽る
一般的に最終学歴が中卒より高卒、高卒より大卒の方が転職時には評価されやすい傾向にあります。高卒と大卒でスタートする月収が違う場合もあります。
そのこともあって、学歴を詐称して転職に挑むような人が出てきてしまうかもしれません。
また、必要資格を持っていないのに、嘘をついてアピールしたり、採用の条件に合わせたりする場合にも経歴詐称になります。
その資格や学歴が仕事上必要なのであれば、免許証や証明証等の写しを一緒に提出させられる会社もありますので、後からバレる可能性がとても高いです。
また、無資格で働いていた場合には会社の信用問題にも関わるので、損害賠償の問題にも発展しかねません。
前職の年収を偽る
中途採用の転職では、前職の年収をベースにして新しい会社での年収が決定されることがよくあります。
つまり、前職での年収が高いほど、新しい会社でも高い年収が期待できる訳です。
なので、良い年収を貰おうと前職の年収を盛って伝えようと考えてしまう方もいるでしょう。
しかし、年収を盛っていても、入社後の年末調整による源泉徴収などで実際の年収と自己申告の年収の差がバレてしまう可能性があります。
転職時の経歴詐称はバレない?
経歴詐称をしようと考えている人は、会社にバレるかバレないか心配になることでしょう。
そこまで経歴を気にしない会社であれば、よっぽどのことがない限り、経歴詐称がバレずに働き続けられることも多いでしょう
しかし、経歴詐称は絶対にしてはいけません。後述しますが、万が一バレた場合には、解雇や損害賠償・刑事事件などに発展する可能性もあります。
それに、経歴を気にするほどの重要な仕事、収入が良い会社などであれば、採用する社員のチェックにも慎重な会社もあります。
「簡単にはバレないだろう」と安易に考えていても、思わぬ形からバレてしまうようなことも十分にあり得るのです。
経歴詐称がバレる理由
上で経歴詐称がバレる可能性も十分にあるとお伝えしましたが、どのような経緯で経歴詐称がバレてしまうのでしょうか?
経歴詐称がバレるケースについて、例を交えながら4パターンご紹介します。
自分から口を滑らせた
働いているうちに、自らボロを出してしまうこともあります。
例えば大卒だと嘘をついていたのに、「20歳で〇〇社で働いていた時は〜」などと言ってしまうと、「あれ?学校は?バイトかインターン?」などと疑われてしまうようなことも出てきてしまいます。
何度か疑われることで、経歴詐称していたのでは?と調べが入るようなこともあるでしょう。
入社時のチェックですぐバレる
学歴や資格などに条件がある求人は、仕事をする上で必要だから条件を設けている場合も多いです。
そのような場合は、免許証や証明証の写しなどを提出させられることもあり、すぐにバレてしまうでしょう。
また、金融機関や機密情報を扱う仕事、重要なポストを与えるなどの採用では、採用する人に対して身辺調査が行われることがあります。
本人が言っていることや履歴書の内容と調査の結果に大きな違いがある場合には、事情を聞かれてすぐにバレてしまいます。
知り合い経由でバレる
特に地元企業や同じ業界に転職するような場合、知り合い経由でバレるようなこともあります。
例えば取引先に前職の会社の人がいて、「〇〇さんがウチに転職してきましたよ」などと世間話の中から、「あれ?彼すぐに辞めましたけど」など、経歴詐称に勘付かれるような出来事が起こるかもしれません。
今の会社に同級生や前職の人が転職してきて、話が合わずに経歴詐称をしていることが知られてしまうようなことも無いとは言い切れません。
年金・保険や源泉徴収等の書類からバレる
会社では、年金や健康保険、税金の支払い手続きを会社が代わりに行ってくれます。
役所への手続きを代わりに会社が行なった結果、源泉徴収や納税額などから前職の収入などを知られることになります。
「今の会社に入社する1ヶ月前まで働いていた」と言っていたのに、源泉徴収では収入が0になっていれば、経歴詐称していたことがバレてしまいます。
経歴詐称がバレた人はどうなるのか
経歴詐称がバレるような可能性はいくらでも潜んでいます。
入社時のチェックでバレるかもしれませんし、数年後にボロが出てバレるようなこともあります。
大きな嘘を付いていればいるほど、バレることに怯えて、不安定な精神状況で働き続けなくてはなりません。
経歴詐称がバレた場合には、次のようなリスクが考えられますので、決して経歴詐称などといった安易な方法をとって転職しないようにしておきましょう。
会社から解雇される
経歴詐称がバレた場合、否応なしに会社から解雇される可能性が高いです。
会社が経歴詐称を理由に解雇する場合には、就業規則の解雇事由に「重大な経歴の詐称」などの記載がないと不当解雇になり得ますが、大抵の会社では記載がされているでしょう。
2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。
①重要な経歴を詐称して雇用されたとき。
このように厚生労働省のモデル就業規則にも懲戒解雇の事由として挙げられていますので(第66条2の①)、ほとんどの会社で経歴詐称が解雇の対象になるとお考えください。
損害賠償を請求される
また、経歴詐称がバレた場合には、解雇だけでなく民事上の責任として損害賠償請求をされてしまう可能性もあります。
損害賠償金の額は、詐称していた期間、給与、損害の大きさなどで違いますが、実際に支払った賃金との差額124万円を損害として請求した事件もあり、請求の一部が認められています(参考:近時の労働判例|東京弁護士会)。
他にも、仕事に不備があったり、会社の信用を損ねたりして、経歴訴訟によって会社に損害を生じさせた場合にも損害賠償請求をされる可能性が高いでしょう。
刑事責任に問われる可能性
経歴詐称では、上記の解雇や損害賠償の民事問題に留まるだけのことも多いのですが、悪質な経歴詐称では刑事告訴されて刑事責任に問われる可能性もあります。
経歴詐称がどのような犯罪行為に該当するかは後述しますので、今一度経歴詐称をすることが犯罪行為になり得るとても重大な行為だと認識しておいてください。
経歴詐称で問われる可能性がある罪
お伝えのように、経歴詐称は犯罪行為に該当する可能性があり、悪質な場合には逮捕されて懲役や罰金などの刑罰を受ける可能性も出てくるでしょう。
こちらでは、経歴詐称がどのような罪に該当するかをご紹介します。
文書偽造罪
経歴詐称のために入社時に必要な書類を偽造した場合には、文書偽造罪に問われる可能性があります。
文書の種類には私文書と公文書があり、私文書は卒業証書や資格取得証明書などの第三者が作成した文書、公文書は免許証や住民票などの国や役所が発行する公的な文書が該当します。
なお、履歴書や職務経歴書は自分で作成する文書になるため、嘘の内容を書いても私文書偽造罪に該当しません(経歴詐称にはなります)。
また、文書にハンコがあるかないか(有印か無印か)で刑事罰も変わり、それぞれ次の法定刑が定められています。
罪の種類 | 罪の重さ |
---|---|
有印私文書偽造罪 | 3ヶ月以上5年以下の懲役 |
無印私文書偽造罪 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
有印公文書偽造罪 | 1年以上10年以下の懲役 |
無印公文書偽造罪 | 3年以下の懲役または20万円以下の罰金 |
詐欺罪
詐欺罪は、人を騙して財物を交付させた場合に成立する罪です。経歴詐称によって会社を騙して、不法に利益を得た場合には詐欺罪が該当する可能性が出てきます。
例えば、本来は月収30万円だったのに、取得難易度が高い資格を持っていると偽ったことで月収50万円で採用されたような場合には、月20万円分の利益を不法に取得したと考えられ、詐欺罪が成立する可能性があります。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
第二百四十六条
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。引用:刑法第246条 詐欺罪
軽犯罪法違反
軽犯罪法の第1条15項には、次のような記載があります。
十五 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者
引用:軽犯罪法第一条
端的にいうと、公務員だったと職歴を偽ったり、博士号を取ったなどと学歴を偽ったりした場合に、軽犯罪法違反に該当します。
軽犯罪法違反の罰則は、拘留または科料です。※拘留=30日未満の刑事施設収監、科料=1,000円以上1万円未満の金銭納付
まとめ
経歴詐称は、職歴や学歴、資格等を偽って入社することを言います。学歴や資格を偽ったりするようなそこまで重大な経歴詐称でなければ、入社後にもバレないこともあります。
しかし、万が一バレた場合には、まず解雇される可能性が高いです。それに合わせて損害賠償請求や罪に問われる可能性も出てきています。
小さな嘘でも、毎日働いていく中でどのような形でバレるか分かりません。バレた時のリスクを考えると、とても安易にできるものではありませんので、経歴詐称は決してしないようにしましょう。